CDの整理をしていたら恩師のエフラー先生のシューベルトの録音を
見つけ、早速聴いてみました。
先生のやわらかく、温かい響きにはうっとり。
「日本人は勤勉で、なんでも進歩が早い。素晴らしいよね。でもね、シューベルトだけは
ウィーン人として、日本人には負けるわけいかないよ!」
レッスン中におっしゃった先生の冗談だが、妙に納得してしまった。
あの土地に染み付いた音楽は、生活の中から生まれてくる。
シューベルトがいつまでもウィーン人の誇りであることは理解できるし、
私みたいな外国人が踏み込んではならない、なにか聖域みたいな
ものを一瞬感じた。
このCDは、先生のコンサートの演奏が、ラジオ放送されたときの録音。
私がディプロム試験(卒業試験)に合格し、完全帰国するときにお祝いに
下さった大切なもの。
ソナタのD575 H-dur、D784 a-moll, D850 D-durの3曲が収録されている。
どれもいい曲。
シューベルトがピアノソナタを初めて書き始めたのが1815年。18歳のとき。
13歳ですでに作曲を始め、リート、交響曲や弦楽四重奏などに比べて
手がけたのが遅く、しかも最初の頃はなかなか満足できず、
未完で終わった曲もたくさんあるのです。
ピアノ曲の傑作の多くが生まれたのは1822年以降で、現在演奏されるソナタも
この頃からの曲が多い。
先日、先輩のコンサートで晩年のD960 B-durも聴いて、
ますますシューベルトに対する憧れは大きくなりました。